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取引価格の問題点

2011.10.07

金融機関や不動産鑑定士が、ある不動産価格を知りたいときに利用する資料として、「生の取引価格」と「標準化鑑定調査価格」とを比べた場合、一般に取引価格は実際に不動産が売買された「正しい価格」であり、標準化鑑定調査価格は「理論価格」であって現実の売買とは無関係と見られ、重視されていない。だが、この認識はまったく間違っている。その理由の第一は、収集された取引価格は正確な価格だとはいえないからだ。売買当事者や仲介業者がある価格を言っても、それが本当に正しい価格であるとは限らない。税務署は事実を知っていても教えてくれない。本当に売買があったかすら明白でない。第二の理由は、一般に売主は「家を一億円で売った」というように、土地建物込みの総額で話すものだからだ。売買契約書にも土地価格がいくら、建物価格がいくらと明記せず、総額のみ記されていることが多い。この場合、土地価格の単価を知るためには、土地建物の総額をまず土地価格と建物価格に分けなければならない。が、総額の分割は簡単にできるものではないのである。そのためには現地調査も必要になり、不動産評価額を算出するのと同程度のコストと時間がかかってくる。三番目の理由は、収集された取引価格には、売買のときに生じるいろいろな土地・地域・売気・買主の特殊状況が織り込まれているからだ。標準化補正されずに特殊状況を織り込んだままの価格が一人歩きしている。特殊性には、(1)売買当事者などの事情、(2)売買の時期、(3)土地と建物の関係から見た土地の有効活用の程度、(4)形状、接道条件といった個別的要因、(5)地域的な価格水準の相違などの地域要因の五つが考えられる。売主・買主の事情としては、たとえば、転勤のため、早く売りたい。一定時期に不動産を売却して譲渡所得税などが安くなるのであれば、安くなる分だけ値引きしてもいい、といった事情もあろう。物騒な事件に関係した物件などは、値が下がることもある。反対に隣家の人にとっては、隣の物件は「スープの冷めない場所」で何かと利用価値が高く、少しくらい高額でも購入を決めてしまうかもしれない。

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